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『クヒオ大佐』監督:吉田大八、出演:堺 雅人、松雪泰子、満島ひかり、中村優子、新井浩文 10月10日より、〈渋谷シネクイント〉、〈新宿バルト9〉ほか全国ロードショー

クヒオ大佐 メイン.JPG

                 ©2009『クヒオ大佐』製作委員会
 「三十七歳。米空軍パイロット、母親はエリザベス女王の妹、父親はハワイのカメハメハ大王の末裔。僕と結婚すると米軍から結婚支度金五千万円が貰える……」などのデタラメを決まり文句に、女性達から推定一億円を騙し取った結婚詐欺師が昭和の日本に実在した。
 自称ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐……ウソみたいだ(笑)。

 かつて日本には同様の結婚詐欺事件が多発していたと聞くにつけ、何れも陳腐なサギ手口に騙される女性がかなり存在したことの方に驚く。
 嘘は大きい程に効果的というが、大きく出過ぎてかなりお粗末なキャラクター設定といい、子供じみた小ネタ・テクといい、そのツメの甘さは本人の「O.K、イケてる」という自負と大きなギャップがあって爆笑。サギ行為に必死に勤しむ程に滑稽な騙す者、脇が甘く思いこみの強い騙される者、隙あらば逆にサギ師を利用しようとする小賢しい者。監督のツッコミ目線がそれぞれに容赦なく注がれて、騙し合いをクスクスと眺める。

 堺 雅人が本来同情無用なサギ師に、滑稽さと複雑さを肉付けしてチャーミング。『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のディカプリオのように、子供っぽさの裏にある悲しみは感情移入を促す。松雪泰子が騙され抜く女の健気さを好演し、嘘から恋愛への境目のない昇華を描き、意外にも純粋なラヴ・ストーリーの側面を見せる。

 更にそもそもアメリカ軍人に化けることが有効に作用した、という事実にも監督は光を当て、日本人特有の屈折を、アクロバティックな演出で盛り込んだ。直視すれば痛く重たい内容を、深追いせずに手際良く見せて、苦々しさを回避して効果的だ。
 『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』でも冴え渡った演出を見せた吉田監督の、清濁併せのむ視点を大いに堪能出来る。(増井志乃)


2009.9.15.update

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