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1960年代のイギリス。ビートルズやローリング・ストーンズを筆頭に、綺羅星の如く数多のロック・グループが登場した時代。
意外にもこの頃のイギリス、民法ラジオ局が認可されておらず、ポップ・ミュージックの放送を1日45分間と制限していたお堅い〈BBC〉ラジオだけ。その為、ジャズやクラシック以外の最新のサウンドをもっともっと聴きたい、という老若男女が楽しみにしていたのは、海賊放送だった。規制と戦いつつ、法律の及ばぬ距離まで沖合に出て、停泊した船の上から一日中ご機嫌なロックを放送するという、気概あるDJ達がいたのだ。
リスクを承知で集まったメンバーはいずれも個性派揃いで、説得力あるアクの強い配役も錚々たる顔ぶれ。ビル・ナイ、リス・エヴァンスというロックな面構えはハマリ役、フィリップ・シーモア・ホフマンはカリスマティックなDJぶりが貫録あり、ニック・フロストやクリス・オダウド、キャサリン・パーキンソンといったイギリスのコメディ畑からも嬉しい面々が揃って、猛者達を面白可笑しく見せている。
また、彼等が自由と音楽を心から愛し信念を貫く様をより引き立てるのが、海賊ラジオ撲滅目指す宿敵大臣を演ずるケネス・ブラナー。権威の徹底したカタさをおちょくった監督の視線が効いている。
それぞれ濃いキャラのプレイ・スタイルを持つDJ達との共同生活に放り込まれた青年が、この不良然とした大人達から友情、恋愛、家族、信念を学んでいく。思春期の青年は、かつて海賊ラジオに胸ときめかせた世代の想いを重ねた、グローイング・アップ・ストーリーの象徴だろうか。
子供の頃親の目を盗んで、枕の下にトランジスタ・ラジオを隠し海賊放送を聴いていたという監督の、船上のヒーロー達への感謝と憧憬が生んだ、ラストの感動的なファンタジーは現代のお伽噺のよう。(増井志乃)
2009.9.18.update

