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『殺人の追憶』で、狂気に対峙した人間の誠実にして無力な滑稽さを鋭くさばき、若くして図抜けた才気を世界に知らしめたポン・ジュノ監督。原案&脚本も手掛けた意欲的な最新作は、再び観るものを打ちのめす重量級の手応えだ。
漢方薬店を営みつつ女手ひとつで一人息子を育ててきた母親。かいがいしく世話を焼く母親と近隣の人々に見守られつつ暮らす息子は、朗らかだが内気で〈小鹿のような目をした〉純粋過ぎる青年。
この静かな街にある日、女子高生が無残な姿で発見されるという凄惨な殺人事件が起き、青年は容疑者にされてしまう。
息子を救うため、真犯人を探し求めて全身全霊で孤軍奮闘する母親。物語は、人間の清濁の境目を行き来して暗部に潜り込み次第にミステリー色を増しつつ、〈無償の愛〉という母親が根源的に内包する本能によって招く悲喜劇を極限まであぶり出す。スリリングな展開は、物凄い遠心力でラストへと収斂していく。
苦々しくも突き抜けた結末は、見終えても尚ざらつく後味を残しつつ、どこか揺るぎない確信に武者震いするような美しさにまで到達している。母親役のキム・ヘジャが、痛々しいほどに素晴らしい。
人間を凝視する視力のずば抜けたポン・ジュノ監督、中毒性高い作風に本作でまた新たな支持者が増すことだろう。(増井志乃)
2009.10.10.update

