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サム・ライミといえば『スパイダーマン』シリーズの世界的大ヒットで健全なメジャー作での評価が定着して久しいですが、成人後に平成を迎えた世代のホラー好きとしては、彼の名前と共に喚起させられるイメージはどうしても『死霊のはらわた』です。近年の彼のオトナゲあるこなれた仕事を観るにつけ、過去の悪趣味作品群を思い出しニヤニヤしてきたものの、社会性の高い自身作と並行してジャパニーズ・ホラー他の小品に資金提供など続けるバランス感覚は、古株ファンからも信頼&リスペクトを集めてきました。
そんな古くからの顧客満足度を100%保障するのが、最新作『スペル』なのです。成功した彼の持てる全てのノウハウとパワーを注入して、既視感ゼロのショッキング・ホラーを撮ってくれたのです。イイ大人が、です。快哉!
理不尽な呪いをかけられた主人公の恐怖の三日間。かいつまむと、とてもシンプルですが、面白さは肉付けの部分にパンパンに詰まってます。
嬉しい程こまめに、大小含めた恐怖のヴァリエーションが披露されます。古典的なショックあり、最新の気持ち悪さあり、生理的な不愉快さあり……大スクリーンを凝視しつつ思わずイヤ~な顔で「ゲゲ~ッ」、「ウェ~ッ」と声に出して感情が発露する楽しさ。隣席の皆さんの反応もそれぞれ愉快で、大バコ映画館でホラー鑑賞、という正統派の愉しみを満喫して、ティーネイジャー気分が甦ってきます。
B級テイストのホラーにしばしば自然発生を伴う笑いも、今作では意識的に盛り込まれてかなりのラフ・ポイントが。ホラー映画のチャーム・ポイントを隅々まで掌握しているのはさすが、サム・ライミ本人が本当にホラー大好きっ子なのだな、とあらためて実感して嬉しくなりました。
出し惜しみのない大サーヴィスぶりは最後の最後まで(エンド・ロール直前まで!)徹底していて、「こんなにいっぱい、本当にありがとう」と心の中で涙ぐむほどの満腹作です。こういう作品に類い稀な映画愛を注ぎ込む監督に、更にリスペクトを深めました。
恐怖に顔を歪める女優が美しいほどホラー映画は魅力的。そんな鉄則をも再確認する、キッチュにして高級なホラー作品です。(増井志乃)
2009.10.18.update

