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『スペル』監督:サム・ライミ 出演:アリソン・ローマン、ジャスティン・ロング 配給:〈ギャガコミュニケーションズ〉 11月6日(金)より〈TOHOシネマズ日劇座〉ほか全国ロードショー

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 サム・ライミといえば『スパイダーマン』シリーズの世界的大ヒットで健全なメジャー作での評価が定着して久しいですが、成人後に平成を迎えた世代のホラー好きとしては、彼の名前と共に喚起させられるイメージはどうしても『死霊のはらわた』です。近年の彼のオトナゲあるこなれた仕事を観るにつけ、過去の悪趣味作品群を思い出しニヤニヤしてきたものの、社会性の高い自身作と並行してジャパニーズ・ホラー他の小品に資金提供など続けるバランス感覚は、古株ファンからも信頼&リスペクトを集めてきました。

 そんな古くからの顧客満足度を100%保障するのが、最新作『スペル』なのです。成功した彼の持てる全てのノウハウとパワーを注入して、既視感ゼロのショッキング・ホラーを撮ってくれたのです。イイ大人が、です。快哉!

 理不尽な呪いをかけられた主人公の恐怖の三日間。かいつまむと、とてもシンプルですが、面白さは肉付けの部分にパンパンに詰まってます。
 嬉しい程こまめに、大小含めた恐怖のヴァリエーションが披露されます。古典的なショックあり、最新の気持ち悪さあり、生理的な不愉快さあり……大スクリーンを凝視しつつ思わずイヤ~な顔で「ゲゲ~ッ」、「ウェ~ッ」と声に出して感情が発露する楽しさ。隣席の皆さんの反応もそれぞれ愉快で、大バコ映画館でホラー鑑賞、という正統派の愉しみを満喫して、ティーネイジャー気分が甦ってきます。
 B級テイストのホラーにしばしば自然発生を伴う笑いも、今作では意識的に盛り込まれてかなりのラフ・ポイントが。ホラー映画のチャーム・ポイントを隅々まで掌握しているのはさすが、サム・ライミ本人が本当にホラー大好きっ子なのだな、とあらためて実感して嬉しくなりました。

 出し惜しみのない大サーヴィスぶりは最後の最後まで(エンド・ロール直前まで!)徹底していて、「こんなにいっぱい、本当にありがとう」と心の中で涙ぐむほどの満腹作です。こういう作品に類い稀な映画愛を注ぎ込む監督に、更にリスペクトを深めました。

 もうひとつ注目すべきは、まだどことなくあどけなささえ湛える主演、アリソン・ローマンの体当たりぶりです。これは、すごい(笑)「あんた、よくやったよ」とねぎらいたくなること必至。ティム・バートンやアトム・エゴヤンなど個性派監督からのオファーが絶えないのも、女優という職業の抱える本質的な被虐性を若くして持ち合わせているのでしょうか、作品ごとに見せるドキッとするような側面に魅了されます。こんなに大変な目に合う『スペル』での彼女に、また新しい側面を観るのは間違いありません。
 恐怖に顔を歪める女優が美しいほどホラー映画は魅力的。そんな鉄則をも再確認する、キッチュにして高級なホラー作品です。(増井志乃)
 


2009.10.18.update

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