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愛妻に先立たれた喪失感から、もう長いこと無表情に生きてきた大学教授。誰とも関わらないモノクロの生活に、ある日変化が訪れる。
久し振りにニューヨークの別宅の扉を開けると、見知らぬ移民カップルが住んでいたのだ。予想外のトラブルに戸惑いつつ二人を受け入れる彼。ジャンベ奏者のこの若者との出会いが、中年男性の心に「寛容」の灯をともす。
その灯りが少しずつ彼の生活に彩りを与え、歓びをもたらしていく様子は、ぎこちなく微笑ましい。しかし友情が深まったのも束の間、若者は拘束されてしまう、不法滞在を理由に。
彼を取り戻そうと奔走する中、彼の母親やガールフレンドと互いに共感を深めていく。しかしそこには9.11以降尾を引く、不法滞在者に対するアメリカの不寛容さがどっしりと横たわっていた……。
ヴェテラン脇役俳優のリチャード・ジェンキンズが、他者と繋がる喜び、無力感と怒り、喪失の悲しみを非凡な静かさで主演してほろ苦い。
冒頭自らの殻に閉じこもっていた中年男性は、頑なに閉ざされたアメリカそのもの。原題『the Visitor』の文字通り、Visitorである移民の若者がノックした扉を開けられる勇気に希望を見出す、監督・脚本のトム・マッカーシーのメッセージがやさしく、真っ直ぐ届く。(増井志乃)
2009.5.27.update

