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アメリカにおける黒人社会から噴出する不満や怒りをその時々の形で問題提起し、エンターテインメントとしてアピールすることに成功してきたスパイク・リー。初期作品ではヒップホップ的アプローチを大胆に取り入れたこともあり、その粗削りさが危険なほどヒリヒリとした熱をはらんでいた。政治的検閲を通った一般メディアからは伝わってくることのない生々しい現場の質感を、人種間の摩擦に不慣れな日本にも運んできた。
社会的成功をおさめてからのメジャー作では、そうした方向性を土台にしながらも一作毎に違う表情の作品を手掛け、近作『インサイド・マン』では洗練された手さばきで犯罪映画を切れ味よく仕上げ監督としての成熟を見た思いがしたが、本作での彼は更に次の地平へと歩を進めている。
怒りの矛先を白人社会に対してだけ向ける時代を終え、国や人種や政治的思想のどこに所属するかは問わず、戦争を支持する者に対して強く抗議しているのだ。アメリカ合衆国に黒人大統領が誕生したのと時を同じくして、こうした作品があのスパイク・リーから発信されたこと自体が感慨深い。
物語は現代のニューヨークで起きた郵便局員による不可解な殺人事件から始まる。更に局員の部屋からは、フィレンツェから行方不明になって久しい歴史的に貴重な彫像の頭部が発見される。殺人に至った真意と彫像を保管していた理由、それは遠く1944年のトスカーナに遡った回想によって明らかにされていく……。
''バッファロー・ソルジャー''と呼ばれた黒人だけの部隊、そのうちの四人の黒人兵士が内戦とパルチザンも入り組む状況下でナチスと戦う中、四人四様の出自を絡めて細かくキャラクターづけされている。
事実を核にしたフィクションの物語だが、悲惨な戦いや惨殺の顛末を実際トスカーナの現場で撮影した覚悟と気概が、歴史的悲劇のシーンにかなりのヴォリュームで詰まっている。史実を縦糸に、様々な理由で戦いに関わる人々の背景を何層もの横糸にして織り込みつつ、戦争の愚かさを訴えた後には、少し甘めの感あるラストがデザートのように後味の良いエンターテインメント作品にしている。(増井志乃) http://www.stanna-kiseki.jp
2009.7.09.update

