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フランスの名優にして、近年プロデューサー業でも『WATARIDORI』『コーラス』など滋味溢れる傑作を生み出している、ジャック・ペランによる最新プロデュース作。
舞台は1936年、パリ近郊の下町にある小さなミュージック・ホール〈シャンソニア劇場〉。
時代は不況の真っ只中で、劇場も閉鎖に追い込まれる。長年裏方で働いてきた男・ピゴワルは、職場を失うと同時に妻にも逃げられ、収入の保障がない為に息子とも離れ離れに。
愛する息子との生活を取り戻す為に一念発起、仲間をも巻き込んで奇跡の劇場再生に乗り出す……。
労働者の不満とファシズムへの抵抗、政党の目まぐるしい政権争い、第二次世界大戦の足音……。社会背景の複雑な変化を、劇場向かいのカフェのウィンドウに書き替えられる時節に便乗したメニュー名でサラリと描写したり、時代の含む苦々しい空気もしっかりと伝える。
そうした土台の上に、売れないボードビル芸人の哀愁、若い歌姫と劇場スタッフとのロマンス、街を牛耳る権力者との一触即発のスリリングな関係が描かれる。
中でも坊やとの再会を願って止まない父親を演ずるジェラール・ジュニョ(『バティニョールおじさん』、『コーラス』でも人間味溢れイイ味)が、不器用でおかしくも悲しい父親像を好演。
監督・脚本はジャック・ペランの甥っ子であるクリストフ・バラティエ。健気な市井の人々やボードビル劇場に対する慈しむような眼差しが、オープニングの長回しからレヴュー・シーンにまでたっぷり降り注がれて、ミュージカル黄金期への憧憬をお伽噺のようにチャーミングなヴィジュアルに仕上げられている。
視覚的魅力も盛り沢山だが、何よりも坊やの為に頑張ったお父さんのシンプルな物語が、爽やかな涙を誘う人間賛歌だ。(増井志乃)
2009.8.11.update

