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『イメルダ』監督:ラモーナ・ディアス 出演:イメルダ・マルコス 配給:〈ユナイテッド エンタテインメント〉 9月12日(土)より、〈ポレポレ東中野〉ほか全国順次ロードショー

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 イメルダ・マルコス、フィリピン共和国で20年に渡りファースト・レディとして君臨し続けた'女帝'。
 民族衣装をアレンジした美しい装いに盛りヘアの、堂々たる佇まいが未だに目に浮かぶ。
 
 しかし何よりも印象深いのは、暗殺された夫・ベニグノ氏のかわりに大統領選に勝利したピープル・パワーの旗手コラソン・アキノに破れ、マラカニアン宮殿を亡命という形で追われた際に映し出された、宮殿に残った膨大な靴やドレス、宝飾品の数々。一目で常軌を逸していることが分かり易かったヴィジュアルのせいか、後々まで「3000足の靴」、「6000着のドレス」など、時には靴好きを表す慣用句にすらアレンジされて、面白可笑しく引用され続けてきた。

 不正独裁政治によって退陣した当時のダーティーなイメージから、過ぎた贅沢ぶりばかりが誇張され伝説となり、本国では「イメルディフィック」(派手な浪費家、無節操な見栄っ張りの意)などという造語も使われている。

 イメルダ夫人のそれ以外の部分を知ろうとしてこなかった私達は、初のドキュメンタリーである今作で荒唐無稽とも思える武勇伝の数々を知ることになる。
 
 外交官としての資質に富み、毛沢東、カダフィ、カストロといずれもコワモテの対外交渉に予想外の成果を残していた実績。一方積極的に内政にも働きかけ、貧困の一因である出生率を下げる運動に成功したり、実用性に乏しい大型文化的箱モノを先進国に誇示するが如く次々と着工したり。国民の評価を得ようが得まいが、国家予算の15%を自由に使って突き進む、決断&行動力!

 彼女の認識では過去の全ての行動は成功であり正義だ。そこに一点の曇りもないことは確信に満ちた眼差しを見れば明らか。その主張がゆるぎない程、現実とかい離してしまう。そこに痛々しさを見るか、ふてぶてしさを見るか、共感を得るか……。

 浪費を指摘されても、それは自らが国民の理想像であるが為。罪に問われても、お上品に議論をすり替え、相手の舌鋒を丸めこむ。

 独自の図解をまじえ人間から宇宙までを読み解く壮大な哲学観は、どこに着地するのか思わず固唾を飲む。信仰宗教の教祖か、ニュー・エイジ系か、はたまた思春期ガーリー風こじつけワールドか、もうファンタジーの域。そんな自説を80歳と思えぬパワーでとにかく一方的に喋り続けるマイ・ペースぶりが、結果、相手の戦意喪失を促すという、批判から身を守る為に長年培った戦術のようにも見える。暖簾に腕押し。糠に釘。豆腐に鎹。イメルダに……。

 亡命~現在に至るまで、係争中の訴訟を150件も抱えながら、今もなおバリバリの現役感はもはやモンスター級。
 つい先日かつての政敵コラソン・アキノ女史が亡くなった今、尚更イメルダのどっこいサヴァイヴ人生は、そのタフネスに思わず感服してしまう。
 図太さは生きる知恵の一部かも、イメルダのおんな道、ある意味女子必見だ。(増井志乃)


2009.8.03.update

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