かつて味わったトップ・レスラーとしての栄光。肉体的な老いと精神的孤独をかかえ、トレーラー・ハウスで裏寂しく生きる現在。暮しを補うバイト先で、侮辱 的な扱いにも耐える。安酒場で年増のストリップ・ダンサーに往年の武勇伝を語り、癒しを求める。絶縁した娘と氷解しかけた関係も、再び失う。
特殊な共感で 支え合うレスラー達は、傍目にはコミカルにすら映るものの、互助関係が成立したプロレス界はぬるま湯のように心地良く中年レスラーを受け入れ、そこでだけ 自尊心を取り戻す……痛い、苦い、切ない、のオン・パレード。
この主演を得る為に実人生があったかのような、ミッキー・ロークの怪演は圧巻。大幅に予算カットをされてまで主人公に彼を推し通したという、アロノフス キー監督。時にサディスティックな程に、これでもかと痛々しさをえぐり撮る見事な手腕は、有り余る愛情の裏付けがあってこそ。
その慈悲深い眼差しは主人公が思いを寄せるストリッパーにも等しく注がれ、彼女の不器用な悲しさをも対照的にあぶり出す。監督の心意気に十二分に応えた ミッキー・ローク、その彼の心意気に旧友ブルース・スプリングスティーンは無償で極上のエンディング曲を提供、と痺れるエピソードも満載。男と女の生き様 を、悲哀を描いた極上の意欲作、ズシンと響くこと必至。(増井志乃)
2009.5.14.update

